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コラム
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近年、英国では自分たちにとってのガーデンだけでなく、昆虫や鳥など、
そこに生息している多様な生き物たちに配慮した「ワイルドライフガーデン」が注目されています。
私も以前から気になっていたのですが、今年(2011年)3月始め、英国への視察旅行の際、 いくつかワイルドライフガーデンの取り組みを視察することができましたので、今回のコラムで報告したいと思います。



王立の植物園である『キューガーデン』は、
ロンドン中心部から地下鉄で約40分ほどの郊外にあります。

ここは132ヘクタールという広大な敷地の中、展示だけでなく様々な教育プログラムに熱心に取り組んでおり、 “ワイルドライフ・エリア”でもその一環として多くの試みがされていました。
例えばクワガタが生息するコーナーを作ったり(夏には沢山のクワガタが飛び回るそうです。)、“なぜ倒れた樹木をそのままにしておくのか”等、自然環境を分かりやすく説明している看板があちこちに設置してあります。

小さく切った丸太が芝生に転がせてあるコーナーがあったので、案内してくださったテイラーさんに尋ねると、 「子供達が丸太を持ち上げると、その下にはたくさんの昆虫がいることを知る。そういう体験ができるようになっているんだよ。」と。私も子供の頃、祖父が育てていた鉢植えを持ちあげて、たくさんの昆虫に驚いた事をふと思い出しました。

また英国で保護されているBadger(アナグマ)が、「もし人間と同じ大きさだったら?」という前提で巣穴を作ってあり、子供達がおおはしゃぎで遊んでいました。私も思わず楽しくなり真っ暗なほら穴の中へ! その外では保護者の方々が読書等をしながらのんびりと過ごしています。

「自然保護」「生物多様性」と一見難しくとらえがちな分野でも、楽しめる教育プログラムと結びつけたとたん裾野が広がり、多くの方が興味を持つという事を改めて実感できました。




同じくロンドンの郊外、キューガーデンの近くに位置する『リッチモンドパーク』へ。
「ワイルドライフガーデンを見学したい」というと「リッチモンドパークは行った?」と 数人の方に言われるほど有名ですが、 特に知られているのが園内にある「Izabella Plantation」です。
17ヘクタールのこのエリアは、周辺からシカが入って植物の芽を食べてしまわないよう フェンスで囲まれていますが、ここも他と同様に誰でも入って散策が楽しめるように なっており、犬もリードをつけていれば入れるそうです。 中には池や流れがあり、多くの水鳥が池で羽を休めています。

冷涼なイギリス では日本と比較すると自然がさらさらと繊細なイメージが多いのですが、ここではできるだけ人の手を加えない形で管理されているためか、樹齢数 百年の高木が枝葉を広げ、少しうっそうとした場所になっていました。 池のほとりでは護岸の丸太で遊ぶ子供の姿が。 最近の日本だったら、こういう場所にはフェンスが設置されるのではないか、と思う と、少々もどかしい気持ちになりました。

一通り中を周ったあと、どうしても園内に生息するシカが見たかったので、日が暮れそうな公園を大急ぎで周ります。 ほどなく数頭のシカを見つけ、車内から写真におさめる事ができました。案内してくれたマークさんによると園内のシカは野生ではなく、昔、狩猟のため連れてこられたとのことでした。

一日でキューガーデン、リッチモンドパークと見学しましたが、ごく当たり前にワイルドライフガーデンが身近にある大都会ロンドンの底力を改めて見た気がしました。




 RHS(英国王立園芸協会)の本部がある『ウィズリーガーデン』へ。
ウィズリーはロンドンから車で1時間程の場所にあり、面積約80ヘクタールと広大な敷地内でワイルドライフエリアは一番奧の場所にあります。
様々な高木が植えられたエリアを通ってゆくと、まだ新しい小屋が建っています。これはバードウォッチングのための場所で、中に入ると「こんな鳥を見たよ」と書き込 みがある黒板が設置されていました。 大きな観察施設ではなく、手作り感あふれるデザインにも好感が持てます。

しばらく窓から観察した後、スタッフ同行という事で、一般は立ち入れない柵の中にも連れて行ってもらいました。 このエリアの骨格をなすのは、そばを流れるWey川の支流でした。驚いた事にこの支流は洪水予防のため地元の当局が掘り、それを野生生物の生息地として利用する、と いう一石二鳥のアイデアでした。この柔軟さにはまさに脱帽です。 小鳥がさえずる中、「これはアナグマの巣穴だよ」「ほら、あそこに大きな鳥がいるよ」と皆思わず笑顔になります。


今回、駆け足で視察したワイルドライフガーデンでしたが、当然、冷涼な北国である英国と日本を単純に比較することはできません。 日本の夏を代表する雑草の生える速度、蒸し暑さ等、全く気候風土が異なるからです。

それをふまえた上でも、自然がより身近にある英国の人々の生活が心に残り、 私自身「ワイルドライフガーデン」の捉え方が大きく変わりました。今回は広大なエリアの視察でしたが、一般の方々もそれらをヒントにしつつ、自宅で実践しているそうなのです。 私も、気軽に自然環境をライフスタイルに取り入れ、それを楽しんでいただけるようなお庭のデザインを大切な一つのテーマとしてゆきたいと、新たな目標に出会えた訪問となりました。


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